海外に住む人なら理解してもらえるだろう、手に入る日本語の本はとにかく何でも読んでみる、という経験。自分の好みとは関係なく読み散らした本について書き散らす備忘録的ブログ。パリ在住なのでフランス語の本も多数。
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向田邦子 「思い出トランプ」
評価:
向田 邦子
新潮社
¥ 420
(1983-01)

向田邦子の短編集。このなかの三つの短編が直木賞受賞作。

読み終わってすぐの感想としては、「向田邦子、おもしろい。」
それから「タイトルの付け方が素晴らしい。」
短編集っていうのは、そこに入っているひとつの作品の題をタイトルとしてつけることが多いように思う。そしてその作品は表題作として他の作品より少しもてはやされている感を持つ。でもこの短編集は「思い出トランプ」。直木賞を取った取らないも関係なく、すべてが思い出トランプの一枚として同等に扱われているようで、作品それぞれの心地よさにうまく上乗せされているタイトルの心地よさがある。気持ちのいいタイトルの本に出会うと読み終わったあと、そのタイトルをかみしめているときに風が吹く。

私は短編が好き。作家の本当の力が見えるのって短編だと思うから。そういう意味でも「向田邦子、すごいな。」と本当に感心した一冊。登場人物の言動の描写がうまいのは、脚本家だったからで、だから書いている文章を読者に映像として捉えさせるのに長けているのか、と予想するけれど、それだけじゃなくて、登場人物の性格や心の動きまでもが、直接的にではなく、匂いとか光とか、うまく言えないけれど目に見えないもので表現されていて、でもそういうの全て、読んでいる私の心がきゅんきゅんしてくるほど手に取るようにわかる気がして「向田邦子、うまいなー。」となるわけだ。

そして特筆すべきは、それぞれの作品の最初の一行の力。これが短編の力にもなり得ると私は勝手に思っている。うまい短編は、最初の一行で頭も心も、そして身体までもが、ぎゅーーーん、と音が聞こえてくるように思うほど、その作家の世界に持っていかれる。

この「思い出トランプ」では全ての作品で、その、ぎゅーーーん、があった。


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