海外に住む人なら理解してもらえるだろう、手に入る日本語の本はとにかく何でも読んでみる、という経験。自分の好みとは関係なく読み散らした本について書き散らす備忘録的ブログ。パリ在住なのでフランス語の本も多数。
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Fabrice Humbert 「L'origine de la violence」
評価:
Fabrice Humbert
Serpent's Tail
¥ 1,579
(2011-07-07)

数年前にFabrice Humbertの「Autoportraits en noir et blanc」を読んだのは、この「L'origine de la violence」が当時話題になっていたので、とりあえず同じ作家の別の作品を読むことにしたからだった。で、いまになって「L'origine de la violence」を図書館で見つけたので読んだ。フランス語が原語の本なのに、日本のアマゾンにはフランス語ではなくて英語訳しか売ってないみたい。そういうもんなんかな。

私はやっぱり話題になった今回の本のほうが断然おもしろかった!しかし夫はこの本を読んでもいないくせに、「えーーAutoportraits en noir et blancめっちゃおもしろかったけどー!?」と言われて、まあ好き嫌いがあるということやね。

ドイツ語だかフランス語だかの先生をやってる主人公が、生徒達と修学旅行みたいなので行ったドイツの強制収容所である写真を発見し、自分の出自に疑問を持って家族との関係を見直していくっていう話。

こう書くとなんだかごちゃごちゃした向田邦子系メロドラマかと思われるかもしれないけど、全然逆。私が好きだなって思ったのは、主人公と父親、父親と祖父、そして主人公と祖父、という男性間の家族の関係ややりとり。男同士ってこんなかんじだろうな、と思わせる空気感が文章から溢れてて、すごくしっくりくる。登場人物のキャラクター設定もきちんとしてあるし、主人公を囲むブルジョワ家族の感じとか、いわゆる私たちが「戦争」という言葉で最初に頭にのぼる第二次世界大戦のあとから数えて、三世代目にあたる30代から40代の私たちの、戦争や世で言われる戦犯や戦災者、に対する偽善的ではない本当の気持ちというか、距離感というか、そういうのがとても現実的に、気負うこと無くうまく描かれていると思う。

そして後半になるにつれて、タイトルと内容がどんどん巧みにからまってきて、サスペンスでもなんでもないんだけどどんどん読み進む。おもしろい本でした。


| 19:05 | フランス | comments(0) | trackbacks(0) |
George Simenon/ジョルジュ シムノン 「Les Memoires de Maigret/メグレの回想録 」
 シムノン二冊目。もう一回メグレシリーズを読もう!と思って選んだこの作品。大失敗でした。大失敗と言っても、メグレシリーズ二冊目で、そのうえフランスで産まれ育ってない私には大失敗という意味。

タイトルをもっと吟味すれば良かったのだけど、メグレ警部ものというのは、フランスで大人気になって、何度もテレビドラマになったり映画になったりしたらしく、そういうことを、今ではもう定年を迎えたメグレ警部自身が「ジョルジュ シムノンという俺のおかげで有名でお金持ち作家になった若造との最初の出会いは、、、、」ってな感じで語るという作りになっているので、私にはこの本の面白さやファンにとってはたまらん感じを想像することはできても、心の底から一緒に楽しむことはできなかった。

残念!でもメグレものいっぱい読んでまたいつか読もうかな。
| 17:48 | フランス | comments(0) | trackbacks(0) |
George Simenon/ジョルジュ シムノン 「Maigret et l'homme du banc/メグレとベンチの男」
評価:
Georges Simenon,G. Simenon
Livre de Poche
¥ 856
(2001-03)

 去年の夏にle monde(フランスの日刊紙)でジョルジュ シムノンの特集をやっていて、別にle mondeは買ってないけど、便乗読み。

いざ読んでみると面白くて面白くてたまらんかった。推理小説作家と少し見下して読み始めたわけやけど、ぜんぜん!人物描写とか社会背景とか話の進み具合とか、純文学のよう。それを夫に興奮して話すと「そうだよ、シムノンは推理小説というより純文学の域に入るよ。実際カナが読んでるのだってPleiadeじゃないか。学校でも推薦図書になってて読んだことがあったよ、すごく感動して感想文はものすごい勢いで書いたことを覚えてるよ。」ということ。
Pleiadeというはフランスで「文学」の印が押された格調あるシリーズ。これで読むとなんか気持ちがいいのです。紙もぺらぺらだしすぐに汚しそうで、荘厳すぎてメトロとかで読みにくいけど。

というわけでそのPleiade一冊で十数編入っているシムノンの短編長編のなかから、盲目にぱっと、最初に選んだのがこれ。
メグレ警部シリーズはシムノンの代表的作品らしく、この「ベンチの男」がシリーズのはじめのほうなのか真ん中のほうなのか終わりのほうなのかわからないけど、すんなり読めた。

刑事ものなので、もちろん殺人事件が起こる。でもそれだけじゃなくて50年代のフランス、パリの人々、社会問題、街並、すべて体験しているような気分になる文章のうまさと強さ。私は自分がよく知っている街が舞台になっている小説が好きなのももちろんあるけど、すっごく変わったとは言え、当時を想像することができるporte saint martinのあたりとか、やっぱりquai des orfevresはquai des orfevres(パリのセーヌ河岸の一部の住所で「警察」の代名詞にもなってる)なんだなあとか、当たり前のことが楽しく読める。それぞれの地区や郊外の街に住む人々の言動や所作、うまい。

ああ、シムノンにすっかりはまってしまいそう。

っつうかやっぱり右岸よね!!
| 17:26 | フランス | comments(0) | trackbacks(0) |
Michel Houellebecq/ミシェル ウエルベック 「La Possibilité d'une île/ある島の可能性」
評価:
ミシェル ウエルベック
角川書店
¥ 2,520
(2007-03)

 私が最初に読んだミシェル ウエルベック。この本を読んで、面白かったからどんどん他の作品も図書館で借りたり買ったりして読んでます。

ウエルベックの本をいくつか読んで思うのは、ーというか全ての本なんてそんなものなのかもしれないけれどー、ぐいぐいするする読める部分と、うーんここいる?と思うような部分がある。でもそれはきっと私の教養や読解力、思考が足りてないからだとも思う。特にウエルベックに関しては、そんな二つの部分(おもしろいとおもしろくないの分け方じゃなくて、二つの観点や時代からの構成)の分け方がはっきりしているから余計に、「もっと教養と知識と読解力がほしいわ」と強く思う。そしたらきっともっと面白いんだろうと思う。

「La Possibilité d'une île/ある島の可能性」の内容はというと、うーん。SFとか新興宗教とかセックスとか。なんかこう書くと「どんな本やねん!」となるかもしれないけれど、本当にそう。そして深い。読んでいて、ウエルベックは思いっきり究極的なモノの突き詰め方や書き方をするけれど、「ほんまにそうやなあ。ほんまにそうやわ。」と納得する。それはよくある洗脳的な、本を読んでいる一瞬の間だけの感覚ではなくて、なにか私の世の中に対する考え方を一生少し変えてしまうような影響力がある。とてもシニックで、でもそれが今の世の現実だわ、というような。


| 10:13 | フランス | comments(0) | trackbacks(0) |
Frederic Beigbeder 「Un roman francais」
評価:
Frederic Beigbeder
Grasset
¥ 3,883
(2009-09)

 毎年ゴンクール賞の受賞者が発表されるのと同じ日に、受賞者を発表するPrix Renaudot/ルノード賞というのがある。それの今年の受賞者はフレデリック ベイグベデールの「Un roman francais/フランス小説」。

ベイグベデールはブルジョワ生まれブルジョワ育ちのおぼっちゃん小説家でテレビにもよくコメンテーターとして出ていたりする、ちょっとしたタレントさん。私がベイグベデールと聞いていつも思い出すのは数年前のギャラリーラファイエットというフランスのデパートのポスター。
普段はデパートに足を踏み入れるのも嫌なくらい、デパートが、特にフランスのデパートという場所に興味がないうえに嫌いな私たち夫婦ですが、そのときは結婚祝いに私の上司からボンマルシェ(これまたパリ左岸のデパート)の金券をかなりの額もらっていて、それを早く使わないと時効になる!ということで、ボンマルシェにえいや!と行ったのでした。必死になってなんとか金券を使い果たした時点で夫が「地下の本屋に寄ってボードリヤールの「消費社会の神話と構造」を買わないとどうにかなりそうだ。」と言うので、もう持ってるのに何故かその本をまた買ったのを覚えています。二人とも疲れきってホームでメトロを待っていると、目の前に大きなギャラリーラファイエットのポスターが貼ってあって、それがベイグベデールが上半身裸でボードリヤールの「消費社会の神話と構造」を手にポーズを取っているものだったのです。それを見てふたりで苦笑してしまいました。どこまでいっても逃げられないなあ。
ちなみに体は他のモデルさんのものらしいです。




ま、そんな話はどうでもいい。Prix Renaudotの発表があってから数日後に義理の姉からこの本がまわってきました。「文章能力のない小説家の本だけど。」というメッセージ付き。

実際に文章の美しさを求めて本を読む人にはおすすめできません。でも別に書いてあることに間違いがあるわけでも退屈なわけでもない。全然悪くない。どちらかというとかなり楽しく読めたし、自分の子供時代のことを思い出したり、いまの私ってなんだろうって思ったり、弟との関係や相違について思いを巡らせたり、読んでいる間の私の心の動きも、日本の小説によく見られるようなただのエンターテイメント的な本なんかよりもずっと興味深かった。ただ、なぜこの作品に一応でも「文学賞」と呼ばれるものを与えるのかは理解できなかった。これはちょっと文学ではないかな。

それと5行に一回くらいの割合で様々な時代の様々な媒体のリファレンスがでてきて、それが彼のスタイルなのかもしれないけれど、ちょっとやり過ぎかな。でもそれらのリファレンスはいつもすっごくうまくあてはまっていてある意味あっぱれ。

これを読んだとあまり人に言いたくないけれど、みんなに「読んでみて」と言いたい矛盾が私の中にある。そんな本って結構あるよね。


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| 18:34 | フランス | comments(0) | trackbacks(0) |