海外に住む人なら理解してもらえるだろう、手に入る日本語の本はとにかく何でも読んでみる、という経験。自分の好みとは関係なく読み散らした本について書き散らす備忘録的ブログ。パリ在住なのでフランス語の本も多数。
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Truman Capote 「Summer Crossing」/ トルーマン カポーティ 「真夏の航海」
評価:
Truman Capote
Modern Library
¥ 1,086
(2006-05)

評価:
トルーマン・カポーティ
ランダムハウス講談社
¥ 1,680
(2006-09-14)

トルーマン カポーティの「La traversee de l'ete」というタイトルが付けられたフランス語訳を読んだ。

パリのグランパレで開催されているアンディー ウォーホルによるポートレート展を見たあと、ミュージアムショップを通ったときに(ミュージアムショップの中を通らないと外に出られない!!というシステム。空港でデューティーフリーショップの中を通らないと飛行機に乗れない!!というシステムと同じ。私はこういうシステムになっている場所では一切モノを買わない。でもチェックはしておいて別のところで手に入れる。邪魔臭い性格。小さな反抗。)カポーティの文庫本がいくつか販売されていた。同世代であるし、ウォーホルが撮影したカポーティの写真も展示されていたからだろう。それから「カポーティの作品が読みたい。」と何日か思い続け、図書館で借りてきた。

私のカポーティ経験といえば貧相なもので、映画「ティファニーで朝食を」と映画「カポーティ」を見たことがあるだけだ。はっきりいってそんな間接的なものはカポーティ経験などと呼べないのかもしれない。というわけで、この「真夏の航海」が私にとって最初の彼の小説になる。

私はフィッツジェラルドの作品が好きだ。彼の作品では登場人物は必死に上流社会にしがみつく。このカポーティの「真夏の航海」では、反発しながらも上流社会という湖にその若い体を漂わせる、若くて若くて胸が締め付けられるほど若いグレディが主人公である。しかしそこに流れる空気は非常に似ていて、私は読み始めてすぐにこの小説が気に入った。

フランス語訳なので、原語で読むのとは違った趣になっているであろうことは予想できるが、それでもはっと息をのむほどに美しい文章がたまにあった。基本的にはグレディの言動や感情を中心に若者たちのニューヨークの夏が語られているが、後半に一部、急にグレディの恋人であるクライドに語り手の対象が移る部分には少しだけ面食らった。その部分への変移は不愉快なものではないにしても、その部分で作家が描きたかったであろうクライドのグレディへの本当の気持ちを、もう少し別の方法で描けなかったものか、という少し残念な気持ちが残った。

どちらにしても、これが私にとってのカポーティ処女作であってその出会いは素晴らしいものとなった。そしてこの作品は彼にとっても処女作らしい。彼が20歳のときに書いたまま、生前出版されることなかったこの小説の自筆原稿は、2005年にサザビーズのオークションにかけられ、翌年出版された。カポーティが生涯出版を拒んだこの作品は未完成であるとされているが、私にとってこの作品の終わり方は非常に素晴らしく、この物語にはこれ以上の終わり方はないように思う。

他にもカポーティの作品を読んでみたい。そして何よりも原語版を読んでみたいと思った。



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| 18:51 | アメリカ | comments(0) | trackbacks(0) |